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行動すれば、責任が生まれる。それが恐ろしい人々は、いつしか行動することを最小限にしようと世の中を無意識に組み立て始めた。その結果、桂男の憂う毒性の社会となったのだ。だが、しかしながら――。
「八房は、ろくでなしだが、人でなしじゃない。人の罪は、人が裁くべきだよ」
妖怪に、エイリアンに社会を否定されようと、作って来たのは人間なのだ。人間の起こした行動が産んだ波紋なのだ。
地球の波は、月の引力で作られたとしても、人の波紋までは干渉させるべきではない。それが、ドラマに出演するという誇りなのだ。だから、マサオは、桂男への協力を断り、彼を止めるためにいま此処にいるのだ。
「淀んだ毒に満ち満ちた環境で発育した人間では、罰が細菌を生む」
「そんなことはない! ……なんて言えない。あなたのいう事も一理ある。今の世の刑罰で、社会が改善するかと言えば、それは分からない。でも、ここは僕らの世界だ。それを外から来たヤツが、ドヤ顔で活躍するなんて無責任すぎるだろ」
「お前たちは責任から逃れたがっている。世にあふれる総意が、別の世界を欲している。今のこの世を愛していない」
「愛してるよ」
マサオのその言葉だけは、桂男を黙らせた。
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