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そこには、高等学校の校舎がある。
白い女性はそこから、まるで何かを数えるみたいに、指を動かして、校舎を調べるようにみつめているらしかった。
「一階……、二階……」
かすれるような小声だったが、わたしの耳ははっきりとそう聞いた。数えているのだ。この女性は一つ一つ、階層を数えている。
「えい……。びい……。しい……」
――ぞっとした。何を数えているのか分かったからだ。この女性は、教室の場所を確認しているのである。
流石にヤバい系の人だと思った。わたしがあまりにその女性を見つめていたからだろう、ケイコちゃんが「ナノ」と強く手を引いた。
あんな様子の人が校内にいたのでは問題だ。すぐにでも先生が注意に来るだろう。そう考えたし、実際向こうから用務員のおじさんがやってくる姿を確認できた。
何者なのか分からないけど、もしかしたら警察のお世話になるかもしれないなと思った。
だって、今この学校は警察が目を付けているのだから。そう思ってもう一度だけ女性の姿を確認しようと後方を振り返った時には、なんとそこには女性はいなくなっていた。
「な、なんだったんだろ?」
「知んないけど、関わりになったって碌なことにならないよ。君子危うきに近寄らず」
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