ニギミタマ① ~十日から十四日~

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 苦笑いをしながらカリンはこちらに軽く首をかしげて見せた。その仕草はなかなかに可愛らしい。カリンはいまいち垢抜けないタイプの女の子だが、純朴なかわいらしさがある。絶対に親戚のおじさんとかに人気なはずだ。 「カリンは歌、うまいから歌えばいいんだ」 「一人だけ歌うのはちょっと……。ケイコちゃんが一緒に歌ってくれるなら、歌いますよ」 「……私は歌、だめなの……知ってるでしょ」  そう、私、一条ケイコは歌がまったくもって歌えない。超絶音痴で音波兵器なのだ。それにも関わらずなぜカラオケに来たのかと言えば、ここが私ら仲良しグループのたまり場なのだ。  ここなら気兼ねなしにおしゃべりできるし、ドリンクは飲み放題だ。しかも、このカラオケ会社の株主優待だかをナノの父親が持っていて、格安で利用できた。  最初は歌ったりもしたが、私とミドリが歌が正直苦手だという事を告白すると、歌うことはなくなって、徐々にここは仲良しグループの憩いの場になっていた。  特に理由がなければいつもカラオケに行くことになり、店員とも完全に顔なじみである。  バイトのお兄さんがたまにサービスしてくれたりするが、どうも私らの中の誰かを狙っているんじゃないだろうか、なんて笑って話したりしていた。まぁよくある女子会だ。  高校二年になり、こんな風に遊べるのも今年までだからと言いつつ、来年もこうしていそうだなーと私は内心考えていた。     
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