ニギミタマ③ ~十八日~

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 そんな四谷ココロは、亡くなった。殺人事件だという。  わたしは、忘れようと思って奥深くに封じたその日の事を、まざまざと思い返すことになったのだ。ふわふわした世界で何も知らないわたしでいる事を、ココロちゃんが許さないと言ったみたいだった。 「四谷さんのこと、なんか知ってる?」  そうチャットメッセージが表示されたとき、わたしは胃の中の物を全て吐き出しそうな気持ちが沸き起こって来た。  ミドリちゃんの好奇心が打ち込んだ、深い意味もないだろうその一文がわたしの免罪符をはぎ取って、お前何か知ってるんだろうと銃口を突き付けてくるように感じられた。  どうしたら正解だったのかなんて誰にも分からない。でも、もしあの時わたしが割って入っていたら、ココロちゃんは死ななかったかもしれない。そんな気持ちが芽生えてきてからは、毎日が苦しかった。  ココロちゃんが殺されてから、学校に警察が来るという。テレビ局の取材だかで、声をかけられたこともあるけれど、わたしは無視を決め込もうと思った。  でも、無視することの恐怖をココロちゃんが訴えてくるようでもあった。  どうして、あの時無視したの? と、毎日夢を見る。     
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