ニギミタマ③ ~十八日~

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 八房の行動をしっかりと追い、彼が目安箱の整理を行うタイミングは逃さなかった。目安箱の整理は人目に付かないように閉じられた社会科準備室で行われた。  しかし、ドアには窓があり、覗き見れば中の様子は確認できる。それだけで十分だった。  八房が目安箱に入った紙を二種類に分け始めるのを見た。  見ている限りではただの書類整理にしか見えないが、一つは確認を終え、そのまま目安箱に戻る紙。一つは確認後、シュレッダーにかけられる紙と分類作業が行われているわけだ。  つまり、シュレッダーにかけられる紙は、不要な紙と判断されたかあるいは、本当に見せる事が出来ないもの、だ。  やがて、八房は赤い紙を手に取った。ひときわ目立つその紙を目にした八房はかっちりと固まったように見えた。慌てふためくというよりも、まるで石化したかのようだった。  そして、その赤い紙は、目安箱へ戻ることなくシュレッダーへと投げ込まれた。  ――捨てた――。  それが答えかと、わたしは決断した。無視などさせるものか。無視することの恐ろしさを教えてあげる。  四谷ココロを無視することは許されることではないのだと、わたしは歩みだした。     
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