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まず、服を確認した。制服姿をしている。つまり、私は家に帰っていないのだろう。この時計の時刻が本当なら、こんな夜遅くまで帰っていないことに、親が心配しているかもしれない――。
――そう考えて、本当に心配するのだろうか。と思いなおした。
私は、いつも曖昧で、自分の事すらしっかり覚えていないのに、他人が私の事を気に掛けるだろうか。
私が行方不明だと報道されたとして、どれほどの人が心配してくれるのだろう。
もしかしたら、私はずっとここで独りのまま死んでいくのかもしれない。そんな風に考えてぞっとした。
誰かが私の事を心配してくれているはずだと、そう考えても、この寂しい世界において、誰ほどの人が他人の私を気にかけるのだろう?
意識のない間の私が何をしていたかを気にしてくれる人が、この街にいるのだろうか。
答えは出なかった。
がたん。
「……?」
音がした。外側からだ。
かちん。また音だ。カギが外れるような音だった。
がちり。
「!!」
天井が開いた。
「あ、起きてたか。気分はどうかな」
男性の声だった。全く聞いたことがない男性の声だ。天井だと思っていたのは蓋のようだった。
私が混乱している頭のまま、身体を起こしてやっと自分がどこにいたのか把握した。
どうやら私は車のトランクの中にいたのだ。
目の前には、男性がにこにこと笑顔を作って見下ろしていた。
「あ、あの……」
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