24人が本棚に入れています
本棚に追加
/241ページ
私は、状況が分からずに探るようにそう声を出した。
男性はなんだかとてもにこにことしていて、嬉しそうに見えた。とても機嫌がよさそうで人当たりのよさそうな印象を受けた。
「ええと、M高校二年の二木カリンちゃんであってるよね」
「え……」
「生徒手帳に書いていたよ」
「あ……」
いつも胸ポケットに入っている生徒手帳が抜き取られていて、その男性の手元にあった。
「なんだか、ずいぶんきょとんとしてるけど、大丈夫かな? 夕方のこと、覚えてる?」
「ゆうがた……?」
ぼんやりする頭を必死に叩くが、それでも夕方のことなんて全く思い出せなかった。私はお昼以降、学校が終わってから何をしていたんだろう……。
「あー、やっぱりぼんやりしてるね。まいったなあ、きちんと話をしたかったんだけど」
男性は困ったように頭をかいた。なんだかちょっと演技っぽく見えた。
でも、話から察するに、私は夕方この人と会って、それから何かあったらしい……。
そして、状況が分かってくるにつれ、私は危機感が膨れ上がって来た。
そもそも、私は記憶以前の問題として、なぜ車のトランクに押し込まれていたのだろう。
人をトランクに入れておく状況なんて、あんまりない。
私が思いつく限り、たった一つ――。
最初のコメントを投稿しよう!