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「ミドリちゃん、大丈夫でしょうか……」
「あいつ、根性論者だからなー……。絶対薬は飲まないだろ」
用を足してから個室に戻ると、ナノが歌っていた。それに合わせてタンバリンをシャンシャン鳴らして激しく体を振るミドリが土気色の表情をしていた。
ナノが某アイドルの歌を歌っているが、その表情は冴えない。それはそうだ。こんな死にかけの表情でタンバリンを振られて気持ちよく歌えるはずもない。
「あ、あんた、辛いんじゃないの?」
「……いや、動いてれば気がまぎれるかと思って……ぐふっ」
「み、ミドリちゃんっ!!」
そのままソファに横倒れになり、ミドリは絶命するかの如く断末魔を上げた。
「やっぱり、お薬のも? うちまで一緒に帰ろうか?」
曲が流れているなか、マイクを使ってそう言うナノにミドリはゾンビみたいにうーうー唸りながら返した。
「……いや、いいよ。うちの方角違うし、今変質者が出るんでしょ……。みんなもまっすぐ家に帰ってくれぇ……」
「だったら、薬だけは飲めよ」
「……お言葉に甘えます……」
やっと素直に薬を飲む気になったミドリは震える手でナノから錠剤を受け取って、水で飲み込んだ。
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