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誘拐だ――。
「ひ……」
私は想像して一気に恐怖が心を染め上げた。この目の前の男性が私を車に押し込んでいたのだとしたら、この男は誘拐犯ということになる。
「あ、いいねその顔。楽しめそうだよ」
にんまりと笑う見知らぬ男性は、口の端から涎を垂らした。そして鼻の孔を膨らませ、私を値踏みするように覗き込む……。
「ちょっとよく分かってないようだから、教えてあげると、キミはこれからボクの玩具になります」
「ぃ、ぃゃ……」
もう擦れた声しか出せない。
何でこんな状態になっているの? 誰か助けて――。それだけが頭にぐるぐる回りだして、まともに思考することなどできなくなった。
「あっ、自己紹介が遅れたね。ボクは、巷で噂の連続少女失踪事件の犯人さ」
まるでピエロみたいに、コミカルに挨拶をする男は終始笑顔だった。それがかえって不気味で、私はもうトランクの中で身を震わせるしかできなかった。
スカートのポケットを確認してもスマホもない。私が気絶している間、持ち物は奪われているようだった。
「あ、でもね。失踪事件ってコトになってるけど、実際のところ、いなくなった女の子たち、みんな死んじゃってるから」
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