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辺りを見回しても、雨のせいか人通りは少ない。すぐ傍のパチンコ店にでも飛び込めば人を呼ぶことはできるだろうが、僕自身若干混乱していた。
目の前で、気になっている女性が襲われているのだから。
僕はもう、理屈がどうとか考えることもできず、彼女の「離して」と怯える声に反応していた。
持っていた傘を振り上げて男の腕に叩き下ろすと、怯んだ男から解放された彼女の手を逆に奪い、そのまま通路から逃げるように駆け出したのだ。
それからは、どこをどう走ったか分からない。とにかく我武者羅に繁華街を駆け抜けて、雨を凌げる軒下でぜえぜえと息つぎをしていた。
しっかりと彼女の柔らかく細い手を握りしめていたままに。
それに気が付いて、僕ははっと手を離した。
「ご、ごめん!」
「……い、いえ……」
謝る僕に、彼女は怯えた様子で少し距離を取る。あちらもあちらで何が何やら分からないのだろう。当然の話だ。
「そ、その、ひ、悲鳴が聞こえたから、さ……」
「あ、……助けてくださったんですね」
「あ、まぁ……そうなるかな……」
「ありがとうございます」
そう言って、濡れた髪を垂らして彼女はお辞儀をした。
ぐっしょりと濡れてしまっているシャツは透けて下着をうっすらと見せていた。僕は思わず目をそらして、言葉を必死に探す。
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