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(なんだよ、この状況! まるでラノベか、マンガじゃん! 完全に今、主人公だろ!)
とんでもないことをしたという、普段の自分では考えられないこの状況に僕はすっかり舞い上がっていた。
こんなドラマティックな展開に遭遇し、あの彼女と接点ができるとは妄想すらできなかった。ともかく、この機会をみすみす逃すわけにもいかない。
せっかくなのだから、彼女の連絡先とか知りたい。
色々と、下心が動きだし、僕の心が変な勇気を持ち出したところで、僕は落ち着くために、食事でもと声をかけようとした矢先だ。
「では、私はこれで……」
と、彼女は雨のなか、脱兎のごとく駆けていき、声を投げかける暇もなく姿を消したのだった。
「あ…………」
僕は茫然と立ち尽くした。
何を夢見がちな空想をしていたのだ。
彼女からすれば、変な男に絡まれて困っていたところに、舞い上がったヒーロー気取りの男が乱入してきたに過ぎないのだ。どっちも厄介なヤツに違いない。
(そりゃそうだ……リアルは小説のようにはご都合展開にゃならない……)
僕はぽつんと軒下でずぶぬれになった靴下の感触に力なく肩を落とした。男を叩いたその時に、傘も捨ててきてしまった。
僕もこのままずぶ濡れで雨の中を行くしかないのだ。
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