24人が本棚に入れています
本棚に追加
/241ページ
(うーむ、でもここのとこ、あの店ばかり行きすぎてるなー。気分転換に別の店でも開拓してみるか……)
そう考えて、駅前のレストランやカフェを物色し始めた僕は、レストランの前で絶句した。
店内をよく見通せるガラス窓の先に、例の彼女と、昨日僕が傘で叩いた男性がテーブルに向かい合って座っていたからだ。
(な、なな……、なんて偶然……。い、いやそうじゃない……あの男、昨日彼女に乱暴していたヤツだ……)
そう考えて、僕は思いなおした。
そもそもあの瞬間で僕はとっさに助けに入ったが、本当にあの男は彼女に乱暴を働いていたのだろうか?
今の彼女と男の様子を窺うに、険悪な雰囲気を感じない。ひょっとしたら、昨日のアレは、単なる痴話喧嘩だったのでは?
男と女のイザコザでちょっとした言い合いになっていた、とかだったら、僕のしたことはとんだ早とちりだ。
何が小説の主人公だ! とんだ勘違い乱暴モブキャラじゃないか!!
……自己嫌悪も通り過ぎるほど、自分に呆れかえってしまった。
憧れの彼女はいま、テーブルの対面に座る男と何やら神妙な顔で会話をしていた。
もしかしたら、昨日の仲直りでもしているのかもしれない。
……そうか、彼女、カレシがいたんだな。当然だよな。あんな綺麗な人、ほっとくわけないし。
最初のコメントを投稿しよう!