サキミタマ② ~十三日、十六日~

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 視線。それが気になって仕方がないのだ。  いつも、誰かに見られているようだった。  それはもう、確実に自意識過剰で、周りから言わせると神経質で変な女という印象になる。  私は私なりに、この状況を克服しようと考えた。  視線に対する過敏症は、鏡をよく見ることで鍛えられるとネットで見た。そこで私は美容院で働くことにしたのだ。単純に思いついたのが、いつも自然に鏡が見える場所に美容院が浮かんだだけのことだ。  美容院のアルバイトを開始してから、食事は相変わらず他人とはできないままだったが、人並みにコミュニケーションができる自分を取り戻すことができたので、私はきちんと社会に適応できていると考えるようにした。  ――変に自意識過剰な私が人に相談を持ち掛けたって、私が悪いのだから仕方がない。  そんな思いが根底にある中、あの日私は夜道を歩いていた。  夜十時。バスを降りると、すでに視線を感じていた。  振り向くと誰もいない。空には月が奇妙に明るく光っていた。  また、気のせいだ。自分の自意識過剰さに嫌気を感じる。私が、おかしいのだ。精神的に異常なんだ。  そう考えて、私は歩く。バス停から少し歩くと、閑散とした住宅地。  そこで私は、ありえないものを見てしまう。     
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