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女子高生の下腹部から大量の血が溢れていた。死んでいるか生きているかは分からない。
何があったのかすら想像もできない。混乱するばかりで、その目の前の女性に改めて視線を寄越して、変なデジャヴを感じたのだ。
――あれ、この人見たことがある。
真っ赤な口をしている女性は私に背を向けた。そして、信じられないことだが、闇に紛れるように溶けるみたいに消え失せた。
その消えた女性の背中を見て、はっきりと思い出した。
今の女性は、私そっくりなのだと。
後ろ姿はいつか届いた写真を想起させたし、真っ赤に濡れた口元で最初は分からなかったが、あの顔は毎日見ている鏡の中の自分自身だった。
「わ……わたしが……?」
しばらく、『私』が消えた闇を茫然と見つめていた。そして、やっと我を取り戻してからうずくまる女子高生が重症だと思い出すと、私は怖くなってすぐ傍の民家に駆け込んだのだ。そして救急車が来たかと思えば次に警察があっという間に駆け付けた。
それからは第一発見者として参考人であるためか、パトカーに乗せられてしばらく質問攻めにあった。
見たことをそのまま話してくれと言われたが、私にはそれができなかった。
なぜなら、あの子の前で血まみれの顔をしていたのは私そっくりの何かだったからだ。
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