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そんなことを言えるだろうか。
自意識過剰な私が混乱の中で見た幻かもしれない。それに、こんな私の言葉など、警察がきちんと受け取るとは思えなかった。
だから、私は女子高生が倒れているのを見付けたとした言わなかった。
ただ、これが最後だからと若い刑事の男性がパトカーで聞いてきた時、最後ならと、『視線』の話をして見せた。
刑事さんは、やっぱり呆れたような顔をしていた。思った通り、信用してくれるはずもない。
だが、丸っきり嘘を言ったわけじゃない。
視線は本当に感じていたのだから。あの空に浮かぶ月がいつもこちらを見ているように思えてならなかったから。
その時はまだ、本当に自分が犯人として疑われるとは考えていなかった。
だが、翌朝目覚めてから一気に青ざめた。
もしあれが、見たものが幻じゃなければ? あの女子高生を殺したのは『私そっくりの何か』なのだ。
そう考えると、私が殺したと思われたって何も不思議じゃない。
六月十六日――。
私は、あのパトカーで会話した刑事さんに聞きたいことがあると言われて、駅前にあるファミレスにやってきていた。
待ち合わせをしているとウェイターに言うと、奥のほうから刑事――三井さんが声をかけてくれた。
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