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それからもう、なんだか空気がぎこちなくなり、三井さんと後から来た男性は退店することを決めたようだった。私もバイトがあるし、あまりファミレスは好きではないから早々に出ることにした。
店から出ると、すでに、若い男性のほうはいなくなっていて、三井さんが改まってこちらに向き直ってお辞儀した。
「お忙しいところ、ご協力ありがとうございました」
「いえ、何の役にも立てずに……」
「いえ、そんなことありません」
三井さんはやはりニコニコと笑顔を作っていた。刑事らしくない表情に、私もへたくそな愛想笑いで返す。
これで息の詰まる刑事とのお話もとりあえず終わりだ。早く日常に戻りたい。そんな風に思いながら私はバイトへと向かうため、三井さんに背を向けた時だ。
「あっ、すいません。一つだけ聞いておきたいことありました」
三井さんの声に私は思わず飛び上がりそうだった。表情には出していないつもりだったが、三井さんに振り返った時の私はどんな顔をしていたのか分からない。
「百田さん。あなた――、双子じゃないですよね?」
「いえ。一人っ子です」
「そうですか。ひきとめてすみません。お仕事頑張ってくださいね」
私はぺこりと頭を下げた。
そして、今度こそバイト先へと歩き出した。なるべく速足にならないように気を付けた。
――双子?
――なぜそんなことを聞いたのだろう――。
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