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サキミタマ③ ~十八日~
六月十八日。昨日は雨が降っていたものの、今朝はすでに止んでいてほっとした。雨の中バスを待つのはうんざりだから。
傘をさすことに上手いとか下手とかあるのか分からないが、私は傘をさしていてもすぐに濡れてしまうのだ。
――私、傘へたくそなんだ。
なんて言って、男子の気を引く女の子がいた。懐かしい友人の話だが、今はもう連絡は取っていない。その子はある日、忽然といなくなってしまったから。
私は今、大学へ向かうバスを待っている最中だった。
近頃は殺人事件に巻き込まれてしまったせいで碌に睡眠ができずに疲れた顔をしていた。朝、鏡を覗き込んだ時、自分の顔にぞっとしたものだ。
……目の下にできたくまが、不気味さを演出していたけれど、私はその時、あの殺人の夜に見たもうひとりの自分を思い返してもいたのだ。
視線を克服するために、鏡を見るということを意識的にしていたのに、それさえも封じられたような気がして、正直なところかなりストレスを抱えていた。
バスがやっと来た。バス停に書いてある到着時刻から五分もずれている。そんなことでさえ私はイラつきを感じてしまう。
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