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きっと、バスに乗り込んだ時の私の表情はさぞ不細工だったことだろう。
「あ」
バスに乗り、まだ降車口のドアが閉まっていないような状態で不意に声がした。
私はそちらを無意識に見て「あ」と、同様に声をあげていた。
その声の主は、バスの後部座席に腰かけていた青年で、あの日、レストランで三井さんに謝罪していた男性だと気が付いた。
「こ、こんにち……じゃない、おはよう、ございます」
思わず目があったためか、あちらも気まずそうに挨拶をした。だから、私も挨拶を返すしかなくて、「おはようございます」と軽い会釈をした。
その後、隣の席が空いていることを確認して、このまま無視をするように別の席へと移動するのもなんだか無礼な気がした私は、気のりはしなかったが、彼の隣に腰かけた。
――バスのドアは閉まり、そしてゆっくりと走り出したものの、私は隣の男性にどう声をかけていいものか分からず、ただ気まずい状態で黙っていた。
これなら、違う席に座ったほうがまだよかったと後悔しはじめたころ、隣の男性がこちらへと窺うように声をかけてきた。
「……あの、こないだは、本当にすみません」
「え、いえ……。別に私はなんとも……」
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