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そこでまた会話が終わってしまった。気まずいバスの狭い座席で私は早く大学についてくれないものかとそれだけを考えようとしたが、ふと、気になることができた。
そういえば、この男性は三井刑事と知り合いだったはずだ。あの日同様に、今日もシャツにパンツというラフなスタイルでいるが、私服警官と言う奴だろうかと考えた。捜査のために、あえて普通の姿でいる捜査官がいるとドラマで言っていた。
あの刑事は去り際に私に、「双子はいますか」と妙な質問をした。もしかしたら、あのもう一人の私の事を掴んでいるのかもしれない。
――それか、私自身を怪しんで、監視をしているのかもしれない。それこそ、この男性が、私の監視役なのかもしれないとそんな風に考えた。
もう一人の私の事が気になっていた私は、それとなく話を聞き出そうと、事件の話題をふることにしたのである。
「あの、事件のほうは、その後なにか……?」
「え? ジケン? ですか?」
男性はきょとんという表現がまさに当てはまるそんな表情をしてみせて、目をクリクリと動かした。なんというか、わざとらしいほどにとぼけている顔だったので、演技が下手糞な人だと思った。
「……公共の場、ですから言えない、とか?」
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