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「その時に、あなたのこと、ひ、一目ぼれしたんです。それから、ずっとバスが一緒なとき、あなたのこと、見ていました。……ご、ご迷惑になっていると、思いもしませんでした……すみませんっ」
「じゃ、じゃあ私が感じていた、視線の正体は……、千原さん……?」
……だとしたら……私がこうなってしまったきっかけとなるストーカー事件の犯人も、また、この男性なのか……。
いや違う。
私はうまく説明できないが、あの時の視線は彼じゃないとはっきり断言できた。
あの背筋を凍らせる、悪寒の視線を、私はバスに乗っている間は感じなかったのだから。
でも、彼はバスに乗っている間、私を見ていたという。――それはそれで、十分不気味じゃないか。たとえあのストーカーの犯人じゃないとしても、よく知らない人からじっと見られていたなんて、怖い――。
私は、もう彼の隣に座ってはいられなかった。
もうあのバスも使えない。
それに彼は、刑事じゃなく、ここの大学生でしかないのだ。なんて勘違いをしていたんだ。本当におっちょこちょいなのは、この私だったのだ。
「あ、あのっ……謝ってすむことじゃないと思います。すみませんでした。ノイローゼになるほどだったとは考えもせずに……」
「もう、いいです……失礼します……」
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