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居ても居なくてもいい人間。それがこの僕、千原マサオ。
妹からは空気だと思われているし、僕自身、自分に自信はない。自分の立場というのを良く分かっているつもりだ。
……でも、それがとても嫌になっていた。
僕は彼女に偉そうに物を言う前に、自分自身もしっかりと認めなくちゃならないのだと考え直していた。
だから、妹との会話は僕の中での第一歩だった――。
いきなりこんな話題を振った僕に、妹は怪訝な顔をして「はぁ?」と答えた。
何言ってんだコイツって顔がそのまま出ていて、こっちとしても、ああ、これは会話の切り出し方を間違えたなと思った。
また改めよう。僕はそう考えて、風呂に向かう。
後ろでは「んだよ、もう」と文句を零しながらアイスをかじる妹が機嫌悪そうにこちらを睨んでいた。
妹よ、兄はちょっと踏み込んでみたかったんだ。他人の世界に。初めてだったから失敗しただけだ、許せ。
風呂に浸かって先日の事を思い返せば、やはり重い溜息が漏れてしまう。
もっとこうしてれば、とか、あんなこと言わなければと後悔がすぐに浮かんでしまうあたり、やはり自分は根暗な男だなと湯船に顔を付ける。
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