サキミタマ④ ~二十日、二十一日~

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 僕はスマホのナビアプリを出して、マップ画面を確認すると、バス通りを使わずに大学へと向かう道を探した。  よくよく見ると、バスで大学に向かう道は大きく回って向かっているので、狭い道を縫うように、大学にまっすぐ走れば、そうそう自転車でいけない距離でもなさそうだ。  普段走らない通りを抜けて自転車をこいで行くと、なんだか気持ちも切り替わるようだった。  今日から僕は、また新しい日々を迎えて生きていくのだ。今日はその記念すべき一日目ということにしようじゃないか。  こうして狭い住宅地の通路なんかを抜けていくと、朝の慌ただしい道路とは違い、静かで人気もあまりないのだという事に気が付く。  まるで自分だけの箱庭のようで気持ちが楽だった。問題点があるとしたら、もう通学中にネット小説を読めなくなるなと思ったが、これを機にネット小説も卒業しようと考えた。  スマホのナビ画面をグリップ付近で確認できるようにしてある自転車は便利で、迷うことなく大学にたどり着ける。  僕はナビ画面をちらりと見て、次を左折するのだと把握して、ギコギコと自転車を進めた時、思い出した。  ――ここ。殺人現場付近だ。  つい先日の夜に調べていた殺人現場はこのあたりだったと思い出した。     
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