サキミタマ④ ~二十日、二十一日~

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 ちょっとだけ興味がわいた僕は、寄り道をすることにした。その殺人現場に――。  そこは住宅地で坂が多くて自転車では大変だった。急勾配のある地形に住宅地を作ったため、坂道が続き、民家の向かいにコンクリの壁がそびえていて、その上に民家がまたできているような造りだった。  しばらくそのあたりを自転車で走り回ったけれど、具体的にどこで殺人があったかは情報に伏せられていたので、分からず仕舞いで、結局現場そのものを、僕は確認できなかった。  ――犯人が見つかればいいと思ってる――。  そう言っていた。でも、もうニュースでは教師を逮捕したことを報道していた。  あとで冷静になって考えてみると、なぜか百田さんは僕を刑事だと勘違いしているようだった。なぜ、そう思ったんだろう。  例えば、僕を刑事として考えていたと仮定して、あの日のやり取りを思い返すと、なぜ百田さんはあの時、あんなことを言ったのだろう?  自転車をこぎながら、不意に浮かんだ疑問が心の中に、妙に引っかかった。  事件を気にしているなら、教師が捕まったことは知っているはずだ。  だったら、『あの教師が犯人なんですか』と聞いたほうが確実だし、自然じゃないだろうか――。     
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