24人が本棚に入れています
本棚に追加
そう。その人影は、もう会わないと誓いを立てた百田さんだったのだ。
僕の声に、百田さんは茫然としていた細い身体をこちらへとくるりと向けた。なんだか儚げで消え失せてしまいそうな感じを受けた。
「あ、あなたは……」
百田さんも驚いた顔をしていた。ただ、その姿はなんだか疲れ切っているようにみえて、酷く不安げな顔をしていたのだ。僕は、また彼女を追い詰めてしまったように思って、その場から動けずに、「すみません!」と視線を外すしかなかった。
だが、そんな僕に、百田さんが駆け寄って、僕の手を取ったのだ。
「お願いします、助けてください……!」
なりふり構っていないように、僕に縋り付いてきた彼女は、心底困っているようだった。
僕は昨日の今日で、どうしたらいいのか困惑したが、それでも彼女の救いを求める声を無視することなどできるはずもなかった。
「おねがいします、追われているの。私を連れて行って……!」
「追われてるって、誰に……っ?」
「おねがい、連れて行ってほしいの、探している人がいるんです!」
「誰ですかっ、ってか、ちょっと落ち着いて……!」
最初のコメントを投稿しよう!