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百田さんは先日とはまるで別人のようだった。だが、同時にああ、これは彼女で間違いないという自分もいたから不思議だった。完全に頭の中が矛盾している。
奇妙だと思いながらも、彼女はホンモノだとも思ってしまうのだ。
だって、彼女のこの必死な表情は、一度見たことがある。
あの雨の日に、路地裏で男性に襲われていた時の顔と全く同じだから。
――そうか、やはりあの男は百田さんに言い寄る、本当のストーカーなのかもしれない。レストランで話していたのは、まるっきりの他人じゃないから、事情があるとかなのかもしれない。たとえば言い寄ってくるバイト先の先輩、とかだ。
そんな風に考えた。
考えたが、それは後付けの理屈だった。
結局の処、僕は男で、彼女は女だった。僕にはそれがすべてでしかなかったのだと思う。僕は、ただ、彼女の傍で力になりたかっただけなのだ……。
「落ち着いて、誰のところへ行けばいいんですか?」
「は、はい……M高校の二年C組担任の……八房という人を探しています」
「……え? 八房? M高校の八房って、あの逮捕された?」
いや、聞き返したが間違いない。昨日調べたばかりだから。記憶だって間違ってない。
M高校、二年C組かどうかは知らないが、八房という教師が逮捕されているのは間違いない。
ならば、どこに行けばいいのだろう。
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