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お皿を片付け始めたニコラに慌てて、俺がやるよ、と制止する。
「食べさせてもらったんだし俺も手伝う」
「そう?じゃあお願いしようかな」
そう言ってくれたのでニコラと階下に下りて、後片付けを手伝う。
皿を洗いながらニコラに聞いてみる。
「そういや、なんで肉じゃがなんだ?他に和食っていっぱいあるけど」
「知ってる中で1番上手く出来るやつだからね」
同じく洗い物をしながらニコラが答えてくれた。そうなのか…肉じゃがが1番上手いのか。それってなんか
「なんか彼女みたいだな」
俺がそう言った瞬間ニコラが手を滑らせた。洗っていた鍋がぐわーんという音を立てて落ちる。
「うわっ!大丈夫か?」
「…鍋は全然大丈夫だよ…」
「ならよかった。あーびっくりした」
そう言ってからニコラを見ると、彼は隣でなんとも言えないような表情をしてこちらを見ていた。
「え、なにそれ、え?」
「いや…何でもないよ…それで彼女っていうのはどういう意味なの?」
あー、それな。鍋が落ちたのですっかり忘れていた。
「日本で肉じゃがっていうと、彼女が彼氏に作る定番みたいな料理なんだよな。肉じゃがで胃袋掴め!みたいな。」
「…へぇー」
「ニコラの肉じゃがすっごい美味しかったし、ニコラなら今すぐ嫁に行けるレベル!」
そう言ってあははっと笑うとニコラは横でずるずるとしゃがみこんだ。
「え、ニコラどうした?」
具合でも悪いのかと慌てて顔を覗き込もうとするとすっと顔を逸らされた。一瞬見えたその顔は少し赤く染まっていたような気がした。
「…チハルの方がよっぽど天然たらしだ」
ぼそっと呟かれたそれが聞き取れなくて聞き返す。
「え?なんて言った?」
「なんでも!よしさっさと終わらそう!」
勢いよく立ち上がって、猛然と片付け始めたニコラに俺は首をかしげた。
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