イロトリドリの世界

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「ご飯、作ってくれてありがと。明日の朝、食べさせてもらうね」 「うん、スタミナつけて頑張んなさい」 私が大学生の時から一人暮らしをしているマンションに到着し、微笑みながらお礼を言うと、羽月も笑顔で私の頭を撫でてくれて応援してくれる。 「ヤバい……今、羽月にきゅんとしたかも……」 「馬鹿言ってないで現実見なさい。それに私はもう予約済みだから残念ね」 そう言いながら、運転席から左手の甲を見せる。 彼氏がいる羽月の手には、仕事が終わると薬指に虹色に輝くダイヤモンドの指輪が現れる。 それはいつ見ても羨ましくて堪らないものだ。 「薫君によろしくね」 「伝えとくー。いつか、北山さんも誘ってダブルデートしようね」 「そ、それは……!」 「じゃあねー」 ご機嫌なまま私を狼狽えさす言葉を残して走り出した羽月の軽自動車は、あっという間に見えなくなってしまった。
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