お人好し女は鉄の女になる。

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楓さんと車内での出来事から一週間が経った。 あの日の夜から私の気持ちは仕事一本に傾けるように、北山さんとの接触を必要最低限にしている。 「あっ、また大型犬がへこんでいる」 「もう、羽月ったら北山さんをそんなふうに例えないでって何回言ったらわかってくれるの?」 私の様子を気遣って声をかけてくれる北山さんから、私はお礼だけを述べてすぐにそばから離れる。 その時、私はあえて姿を見ないようにしているけれど、羽月からは尻尾と耳がしょんぼりと垂れているように見えているらしい。 「あんなんで肝心の”おもちゃの国”のプロジェクトは大丈夫なの? 莉瑠のせいで北山さんの企画がダメになっちゃったりして」 「それはないよ。プロジェクトメンバーの人達はさすがだよ。着々と自分のやるべきことをこなして、部長が望む結果を出しているもの」
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