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北山さんが頬釣りをやめて顎を私の額に乗せると、思いついたように言った。
私はさすがにこの問いには無言ではいけないと思い、慌てて返事をする。
「は、はは、はい……! ふ、ふつつかものですがよ、よろしくお願いします!」
「ははは! 富田さん、古風すぎる!」
自分でも変な返事だとは思った。
でも、頭の中が幸福感で蔓延していて浮ついているから、ムードがある返事なんかできないんだ。
「うん、こちらこそよろしくね。富田さんのこと、ずっと大切にするから」
でも、優しい北山さんは私の気持ちをちゃんと汲み取ってくれ、胸の中が高揚感でいっぱいになる言葉をくれる。
私は返事代わりに震えた腕を伸ばし、彼の背中に回してきゅっと力を込めた。
それが合図となり、私の額にあった彼の顔はそっと離れ、私の顔を覗き込み視線を合わせる。
きゅっと結んだ私の唇に柔らかいそれが重なったのは、そのすぐ後だった。
重なってからすぐに離れ、そして「ふはっ」と嬉しそうに、でも気恥ずかしそうに微笑む北山さんが至近距離にいる。
私は今、幸せの大洪水に飲み込まれそうなくらい頭の中がふわふわだ。
「好きだよ、富田さん……いや、莉瑠ちゃん」
突然名前で呼ばれ、さらに困惑しかない私を、北山さんはいつまでもずっと愛おしそうに見つめてくれていた。
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