24章:恋味タルトポワール

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なんだろう、お茶でも出してくれるのかな。 どくん、どくんとうるさい心臓を抱えながら恵梨はそれを見送った。お客さんがきたのだから、お茶を出してくれるのはある意味当然かもしれない。 しかし、数分が経って戻ってきた志賀原が持ってきたのは、お茶だけではなかった。 大きなトレイ。そこに、大きなホールケーキが乗っていた。 多分タルトだ。茶色のタルト生地の上には薄い黄色のフルーツらしきものが綺麗に並べられていて、中央にはミントの葉が飾ってあった。 ケーキ? しかもこんなすごいケーキ? 恵梨はぽかんとしてしまった。 それをリビングのテーブルの上に置いて、志賀原はソファの向かいの椅子に座った。 「お待たせ」 「ううん……これ、志賀原くんが作ったの?」 ここに持ってくる時点で当たり前のことだったかもしれないが、つい聞いてしまった。あまりにケーキが立派だったもので。 「ああ。……口に合うといいけど」 「すっごくおいしそうだよ!?」 「そうか。ありがと」 食べる前からそれがとてもおいしいのはわかっていたので、恵梨はつい勢い込んで言ってしまった。志賀原は嬉しそうに笑う。 そのあと志賀原は、ナイフでケーキを切り分けてくれた。立派なホールケーキを切ってしまうのはもったいない、と思うくらいケーキは綺麗だったのだが、切らなければ食べられないし、それに志賀原が作ったというこのとてもおいしそうなケーキを味わいたい気持ちのほうが強かった。 6等分して、ひときれを綺麗な花柄のケーキ皿に乗せてくれて、「どうぞ」と恵梨の前に置いてくれた。 「ありがとう」 次にひときれを同じ皿に乗せて、自分の前に置く。 「さぁ、どうぞ」 言われたので恵梨はごくりと息をのんだ。 添えられたフォークを手に取る。 「いただきます」 ケーキの先端を少し切り取り、おそるおそる口に運ぶ。 おいしいのはわかっていた。 けれど、好きなひとの手作りだ。 しかも多分、……自分のために作ってくれた、もの。
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