1章:はじめまして、親友

3/4
前へ
/147ページ
次へ
「篤巳 恵梨(あつみ えり)です。趣味は、お菓子作りです。よろしくお願いします」 5年3組。初めてのホームルーム。そんな自己紹介をした。 手元にはプリントがあった。先生が、自己紹介の時間の前にくれたものだ。それには全員の名前が漢字とふりがな付きで載っている。 新しいクラスでの席順は名前順だった。そのせいで恵梨は『篤巳』という名字のために、かなり前のほう……二番目に自己紹介をすることになってしまった。 クラスでおこなうなんでもかんでもが一番最初か、遅くても二番目か三番目になってしまうことは、もうなれっこだったけど。 一番はじめに自己紹介したのは男子だったのであまり参考にならなくて、「これでいいのかな」と思いつつ、ちょっとびくびくしながら自己紹介したのだけど、終わったときに気付いた。 こっちを見ている子がいる。 それはクラスの真ん中あたりに座っている女の子だった。 オシャレな子だなぁ。恵梨はその子を見て最初にそう思った。 多分ほどいても肩につかないくらいの長さの髪だろうけど、それをぴょこんと短いツインテールにしている。そこには黄色いりぼんが結ばれていた。服も流行のポップなキャンディの絵が描いてあるトレーナーを着ている。どちらかというと、元気な印象のある女の子だった。 そしてその子はなんとホームルームが終わるやいなや、恵梨のもとまですぐにやってきたのだった。 「ねぇ!あなた、私と同じ漢字だね!」 突然話しかけられたことにも驚いたのだけど、その子の言ったことに恵梨はもっと驚いた。 同じ漢字? すぐにはわからなかったのだけど、その子が胸につけている名札を見て、あっと思った。 そこには『高村 梨花(たかむら りか)』と書いてあって、つまり『梨花』の『梨』の字が『恵梨』の『梨』と同じだったのだ。 恵梨だって同じように、全員が自己紹介をするうちにその子の自己紹介を聞いたのだけど、漢字までチェックしていなかった。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加