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「ほんとだ」
『初めて気づいた』という声で言った恵梨に、その子はちょっと不満そうな顔をした。
「えっ、気付いてなかったの?」
あっ、失敗した。ここは「同じだね!」って笑っておかないといけなかったのに。
そうすれば仲良くなれたかもしれないのに。
でもやっぱり心配には及ばなかった。
「ま、いいや。席、遠いもんね。ねぇ、仲いい子と同じクラスになった?」
その子は、梨花はにこっと笑って言ってくれる。
その笑顔は恵梨にとって大きな救いだった。
恵梨は首を振った。ただし、笑顔が勝手に浮かんだ顔で。
「ううん。仲良かった子、みんな違うクラスになっちゃったの」
「そうなんだ!ねぇ、名前似てるし、うちのグループにこない?」
期待したとおり梨花はそう誘ってくれて、そしてすぐに友達を紹介してくれた。友達は2人いる、と言っていて、恵梨を入れると4人になった。
クラスでおこなうあれやこれやは、偶数でおこなうことが多い。体育の時間のグループ組は2人が基本だし、勉強だって『ペアを組んで』と言われれば2人だ。
それに、すべての学年の何人かで組む『縦割り班(たてわりはん)』も同じ。クラスの番号、つまり『1組』『2組』という番号が同じの、違う学年で組む班。それも同じクラスから出るのは2人なのだ。
おまけに今年ある林間学校や、来年ある修学旅行だってグループは4人だと聞いている。
あとから、グループのみんなと仲良くなったあとから「実はもう1人欲しかったんだ」と梨花に打ち明けられた。
「こういうの、『ださんてき』っていうんだよね。ごめんね」なんて、ぺろっと舌を出した梨花だったけれど、恵梨にとってはなにも悪いことなどなかった。
「ううん、梨花に声かけてもらえたのも嬉しかったし、梨花と仲良くなれたのも嬉しかったよ」
はじめは「えりちゃん」「りかちゃん」と呼び合っていたけれど、すぐに「呼び捨てでいいよ!」と梨花に言われてからは名前そのままで呼んでいる。
そのくらい、梨花とはすぐに仲良くなってしまった。
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