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第1章
高校二年の夏休みが終わった。宿題もなんとか終わった。
今日から新学期。
目覚まし時計に起こされたあたしは、まだ半分寝たまま制服に着替えた。
うちの学校は進学校のわりに校則がゆるく、『学生らしくあれば』、靴下にワンポイントが入っていようが、セーターの色も自由に選べた。男子はパーカーとかキャップを合わせてるやつもいる。
台所に行くと、パパがゆで卵をむいていた。
クロワッサンを載せた皿を持って自分の席に着くと、パパは顔を上げた。
「おはよう、今日から新学期だな。嬉しいか」
新聞を置き、あたしのマグにポットの紅茶を入れてくれる。
「えー、別に。でも、美沙希やなっちたちに会えるのは嬉しいかな」
「ま、高校生なんてそんなもんだな」
つれない返事にもパパは機嫌が良かった。そこに詩織さんが白いタイトスカートにベージュのキャミソール姿で現れた。
「私の服が見つからないんだけど……」
彼女はそこで言葉を切ってあたしに視線を移す。頭に、数日前、彼女のクローゼットから拝借したカットソーが浮かび、思わずその視線を避けた。
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