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この秋、俺は最愛の人との間に産まれていた娘に、漸く会うことが出来た。
娘の名前は夏美。
焦げ茶色の軽くウェーブのかかった髪と、俺と同じブルーと淡いグリーンのオッドアイを持つ。
顔立ちはこそ俺に似たが、その性格は俺が愛した愛しい人とよく似ていた。
声もそっくりで、夏美の声を聞いた時は麗蘭と同じ声が再び聞けた事に涙が溢れた。
もしも、会えた愛しい娘にまだ大切に思う相手が居ないのならば。
俺は自分の国で一緒に暮らさないかと話すつもりでいた。
しかし、会えた娘の隣には娘に愛され、娘を愛する。
そんな男が居た。
しかも、それは俺の学生時代の歳下の友人で…
つまりは娘とより、俺との方が歳が近い。
そこに、俺としては心配はあったのだが、二人を見ていればそれは杞憂だった。
歳の差はあっても、二人は互いを思いやり、互いを唯一無二として愛し合っていた。
俺は大切な人を愛していたけれど、最後まで愛して隣に居ることは叶わなかった。
そんな俺が、心から愛する娘が愛しい相手と共に生きることをどうして阻止出来るものか…。
とても短い期間ではあったが、俺にだって愛する麗蘭と過ごした大切な時間がある。
それが、あるからこれまで生きてこれたと言ってもいい。
だから、俺は娘の幸せを願い、会いに行く約束をしてその手を離した。
きっと、明の隣に居れば夏美は幸せに微笑む人生を過ごせるから…
それから、数ヶ月後。
明と娘の夏美から結婚したい。
とりあえず、先に入籍を済ませたいとの連絡がきた。
理由を聞いた俺は、また飛び上がらんばかりに喜んだ。
夏美が、明との子を妊娠したという。
次の夏には俺の娘は母親に、そして俺は想像もしていなかったが孫が出来るというのだ。
「麗蘭、聞いておくれ。夏美がお母さんになるんだって!しかも一気に二人だよ!俺はおじいちゃんになるんだ!」
写真の麗蘭はいつも微笑んでいる。
その柔らかな笑みを俺は愛していた。
『エド、張り切り過ぎないのよ?』
俺の耳にはそんな声が聞こえた気がした。
「ふふ、そうだね麗蘭。俺はおじいちゃんだからね…」
しかし、喜びから来日してたくさんのベビー用品を買った俺に夏美が苦笑したが、それも愛ゆえの行動である。
sideエドワード Fin
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