夢逢人

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『神様…どうか…彼を助けてください。彼だけでも……。』夢の中の私は必死で願った。どんどん暗い森を走ると一筋の明かりが私達を迎える。走り抜けたその先に月明りに照らされた湖が一面に広がる。水辺には綺麗な睡蓮の花が咲き誇る。何とも幻想的で時の流れがゆっくりと過ぎていく。走り疲れた私達は水辺で腰をかけ休む。『私達はこの時代では結ばれてはいけない縁だったの?』と私は彼の顔を見上げる。『……。そんな事はない。絶対そんな事はない。』彼は私の瞳に必死に訴えかける。『もしも、俺達が結ばれてはいけない2人なら俺達は今こうやって出逢ってはいない。出逢うべくして出逢った2人だから俺達は引き合わせられた。必ず意味のある事だった。だから、そんな風に言わないでくれ。それとも、俺と出逢ったことを後悔してる?』と悲しそうな眼差しで問いかけられた。『そんな事ない。絶対そんな事ない。あなたと出逢わない人生なんて考えられない。あなたと出逢わなかったら私の人生は暗く生きている意味さえ分からなかった。……。ごめんなさい。つまらない事を言ってしまって。』と彼の視線を逸らしてしまった。 顎をクイッと上げ彼はやさしくキスをした。『………。』彼の唇から伝わる私への愛情はそれまで感じていた不安をあっという間に払拭してゆく。『……不安にさせてごめんな。』彼の優しい眼差しに涙を浮かべる。『神様……さっき言った願いは取り消してください。出来る事ならこの人とずっと永遠に添い遂げたいです。どうか……神様、この願い聞き入れてください。』と必死に神様に届くように強く願った。月明かりがゆっくりと包み込んでゆく。
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