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意識を取り戻すとすぐに『私、ここに行かなきゃ。ここで彼に遭わなきゃ。』と突き動かされる想いに背中を押された。私は記憶が消えてしまわぬうちに必死であの湖を調べた。
あの情景がピッタリ合う場所。そこに辿りつくにはたくさんの時間がかかってしまったけれど私は必死で彼の居場所を探した。諦めたくなかった。今度こそあの手を離さず掴んでいたい必死の想いは私と彼とを紡いでいく。『あっ、見つけた。ここだ。』私の想いは繋がった。ようやく夢に見たあの場所に辿り着いた。その場所は長い時間が過ぎてしまって昔の面影は少なくなっていたが間違いなくその場所だった。しかし、そこには彼の姿なんてなかった。そんなの分かりきっていた事だった。でも、私は行かずにはいられなかった。彼の許に行かなければならなかった。どこを探してもどれだけ呼んでも彼はその姿を現わしてはくれなかった。心も体も疲れ果て私はその場所に座り込んでしまった。どれだけの時をその場所で過ごしていただろう?気付くと辺りはすっかり暗くなってしまい月明かりだけが照らしていた。『この……景色。見覚えがある。』月明かりに照らされ湖一面が何とも幻想的な光景に変わっていった。『遠い昔。私はこの場所に彼といた。彼と逃げ延び未来を誓い合った。そうだ。ここはそこだ。』私は遠い記憶が蘇り込み上げる思いに胸を締め付けられていた。『彼は?彼はどこ?』周りを見渡すが暗く静まり返り私以外誰もいる雰囲気ではなかった。
『当たり前か……。』そうつぶやいた瞬間。『大丈夫ですか?』と近寄る人影。
『ハイ。大丈夫です。少しこの景色を見入っていました。』と話し返す私の目に飛び込んできたもの。それはずっと探し求めていた彼の顔だった。『あっ、やっと会えた。生きていてくれたんですね?』と呟く。その言葉を聞いた彼の表情も驚きの表情へと変わっていった。『あっ、あの夢の……。』互いが一体どういう相手であるのか。という事を肌で感じ交差していく記憶の針が動き出した。長い間必死で求め続けてきたものが今目の前に現れたのだ。時計の針を巻き戻すかのように2人はお互いの再会を噛み締めた。想いが引き寄せ合った奇跡は長い時をかけて誓い合った『約束』という未来に想いが繋がる瞬間だった。
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