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相手も最終決戦に相応しい口上を読み上げ聖剣をかざしているのだが、全く耳に入らない。
魔王も今まで多くの勇者を相手にしてきたが、こんな者は前代未聞だ。
普通は伝説の鎧とか兜とか身につけてくるだろう。
なのになんで、全裸に聖剣なのだ。下半身の聖剣も合わせて二刀流とでも言うつもりか。
「うむ? そもそも拙者が裸であることに何の不都合があるのだ?」
「あるわよ!? 大ありよ! おかしいでしょ常識的に考えて!?」
「ふ、魔王から常識を説かれるとは……拙者も耄碌したものでござるな」
「はっ倒すわよ、あなた?」
やれやれとばかりに肩を落とされ、額に青筋が入る魔王。
しかし、伊達に長年魔王を務めているわけではない。
思考は常に冷静に考えを巡らせる。そして、これは作戦に違いないという解に到着し、落ち着きを取り戻す。
「ふぅ……でも、考えたわね。確かにあなたの行動は私の意表を突くものだったわ。でも、動揺した程度やられるほど私は弱くはないわ」
「いや、拙者は常日頃からこの格好でござるが?」
「………マジで?」
「大マジでござる」
真顔で頷かれて再び頭が混乱する。
勇者には嘘をついている様子は見られない。
いや、だっておかしいだろう。
仮にも勇者なのだ。人間の代表としてここまで来ているのだ。
もしも自分が全裸で相手と対決したら、間違いなく魔族総出でバッシングされるだろう。
魔王だって自分達の代表が全裸とか死んでも嫌だ。というか死ぬ。
「いや、でも、こんな情報初めて聞いたんだけど、私」
「百聞は一見に如かずとは、まさにこのことでござるな」
「あんたの情報だけは知りたくなかったわ!」
無駄に口が上手い勇者に苛立ちながら、魔王は過去の情報を思い出していく。
「勇者の服装は貧者のそれっていうのはつまり……」
「無駄な武具はつけぬ主義なのでな」
どう考えても必要必須なものだろう、それは。主に下半身部分に関しては。
「そう言えば勇者の姿を見た者は皆体を固くするって……」
「うむ。何故か初動を遅らせてくれることが多いな。不思議だ」
そりゃ、いきなり全裸の男が目の前に現れたら誰だって固まるだろう。
そう心の中で思いっきり毒づきながら、魔王はさらに情報を整理していく。
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