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「もう、髪形崩れるじゃないですか」
「へ~、セットしてたのか?」
「失礼な!! あ!? ところで、先生あの時なんで泣いてたんですか?」
先生は、ばつが悪そうに私から視線を逸らし校庭に視線を落とした。
「卒業式の日、ここから外を見てたら、見つけたんだ」
「誰をですか?」
「学生の頃、憧れていた先生が、お母さんになってて……なんだか、懐かしいとか幸せそうでよかったとか、いろんな感情が湧いてきて……情けない所をみられたな」
私は、首を振り先生に手を差し出す。
「情けなくなんてないですよ。私もいつか、そう思える日がきっときますね」
「素敵な恋をするよ。でも……好きになってくれてありがとうな」
少し照れながら笑い、先生は私の手を握ってくれる。
「あれ……今年もいるな」
そう言って、先生は校門で誰かを待っている女性を指さした。
「あの人が、昔、俺の先生だったんだ」
「……あれ、私の母です」
「えっ!!」
私は、先生の手を離し悪戯っ子の様な笑顔を浮かべた。
「私が素敵な女性になって、今ふったことを後悔する日がくるかもしれませんよ」
「え? 水島??」
私は先生に背を向けて、走り出した。
素敵な思い出を、沢山抱えて。
いつか、素敵な女性になって、まだ先生を好きだったら……その時もう一度……。
それまで、バイバイ……私の初恋。
【END】
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