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「夏美、無理することはないんだから休んでおけ」
元から過保護気味だった明さんは双子の妊娠から更に過保護になっている。
幸いにして、私の悪阻は現在異様な眠気だけだ。
智子さんもそれを知っていてどうしても眠い時は少し上の自宅で寝てからまた仕事に戻っている。
家と職場が同じビル内だから出来る技である。
そう考えたら世の働く妊婦さん達に比べて通勤の負担もなく、休みながら仕事が出来るなんてありがたすぎる環境だ。
吐き気が酷いわけでも、ましてや吐き続けて水分も取れないような酷い悪阻ではないのだ。
休み休みでも動けるのならば働きたいと思っての行動だ。
しかし、心配性の明さんはそれを良しとしない。
故の朝から休んでおけ発言である。
「眠くなったら智子さんにお願いして、休みにこの部屋に戻ってるし。眠気だけなんだから私は大丈夫だよ?」
そう言うも、なかなか納得しない。
心配性過ぎるのも困りものである。
「まぁ、今日は俺も事務所に居るから良いだろう。でも本当に無理はしないでくれ。子どもを産むのだけは代われないからな」
それは、確かなので私は答えた。
「うん、無理はしない。この子達が大切だから」
そう微笑んで答えれば、やっと落ち着いたのかぎゅっと抱きしめて明さんは一息吐くと言った。
「頼むよ、奥さん。今の最優先は夏美とそのお腹にいる二人だからな?」
その言葉に私は頷いた。
「分かってる。大切だもの、無理はしないわ」
そう答えると、ぎゅっと抱きしめてくれる。
私の落ち着く大切な人。
その子どもが居るんだから無理はしない。
こうして、過保護な明さんと何とか今日も仕事へと向かったのだった。
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