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◆
公香との関係が始まったのは、二年ほど前からだ。
きっかけは些細なことで、お互いに悩みや愚痴をこぼしているうちに親しくなっていった。
そのうちふたりで飲みに行くようになり、そのまま……というありがちなパターンだった。
初めてふたりでホテルに入ったとき、公香はいたずらっぽく笑って言った。
「いいの? 奥さん、いるのに……」
「あいつとはずいぶんしてないんだ」
そう嘯いて、雄貴は彼女と関係を持ってしまった。
公香が妊娠したと知ったとき、雄貴の中で焦りと同時に喜びの感情がわいた。
妻を裏切り続けた挙げ句、不倫相手を妊娠させてしまった。
――しかし、妻とは叶わなかった願いが、ここに実を結んでいる。
そう思ってしまえば、妻への罪悪感より、自分の子供ができたことへの喜びの方が勝ってしまった。
雄貴は自分の子を身ごもった女の肩を掴んで言った。
「公香……子供、産んでくれ」
「え……いいの? じゃあ……奥さんとは……?」
「ああ……あいつとは、別れる」
「ほんとに? ほんとなのね? うれしい……!」
公香は雄貴に抱きついた。
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