【霊術真理・壱】三月/入学式と出会い

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 簡素な部屋、特に何か際立ったものがあるわけではない。あるのは、寝具と、箪笥と、学習用の机と、本棚。机の上には新品の教科書―――とも名付けにくい珍妙な題目の本たちと、使い古された筆記用具が散らかり、本から飛び出ている付箋や、机にばらまかれている蛍光マーカーが、彼の努力を示している。  鳥の囀る声は、早く起きろと囁くかのように彼の耳に届き、一瞬表情を歪められる。 昨晩の就寝時間は、彼の記憶が正しければ深夜の三時ほど―――時計の針を見やれば、今は朝の六時半前後。総合したとしても四時間程度の睡眠しか取れていない。睡眠不足は目に見えて顕著なものだった。  寝ぼけ眼を擦って、一つ寝返りを打つ。やや体がだるさを訴えてくるが、起きないわけには行かず、彼は一度うつ伏せになると、肘で体を起こし、とりあえず寝具の上に座り込んだ。  まだ瞼が完全には持ち上がっていない。何度か気怠そうに瞬きをして差し込む朝日を見やると、彼は、ゆっくりとした動作で立ち上がり、閉じていた遮光幕を開き、やはりまだ見慣れない外の風景を見やり―――驚いたふうに、二回瞬きをした。  「あれは……?」  都内某所。  入試試験はなく、一般中学や高校からによる推薦制度もなく、一体何を、どうすれば入学条件を満たすかも公開されていない―――しかし、入学さえすれば、将来の栄光が約束されていると噂されている(つち)()(かど)(がく)(えん)は、本日何百回目かの入学式を迎える。
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