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季節は三月。桜ではなく梅の花が力強く咲き誇り、老齢の鳥たちが新しく敷地に舞い込んでくる新芽たちを温かく見守っていた。
元来であれば入学式は四月の初旬に行われるものであり、三月の梅の咲く時期に行われるものではないが、それは学校の事情と趣向が絡み合っている。
土御門学園は伝統と規律を重んじており、元を辿れば平安時代にまで遡らなければならないほどに学校の歴史が深い。
曰く、学園創設当初である平安時代には、桜よりも梅を祝いの花として愛でる傾向にあり、土御門学園の原型の学舎も、当然桜よりも梅を愛でては学園を梅の花で満たしていたとされている。くわえ、一週間も咲き誇ることが出来ず散る桜より、寒さの中でも咲き誇ることの出来る梅の方が縁起がいいと、学園創設者である安倍晴明に担ぎ挙げられて、今もそれが続いているのだという―――が。
「迷ったな、完全に」
風を纏って舞う梅の花を目で追い、形容しがたいほどに荒れきった森の中のど真ん中で、丹槻紅はそう呟くと、吹き抜けるにはまだ冷たい風に、わずかに目を細める。
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