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はて、どこで間違えたのかと。遡ればもはや、この学園に来るきっかけになったところまで、振り返ることになってしまいかねない話だった。
紅は昨年度の夏、唐突に推薦書が届き、受験も面接も一切することなく、土御門学園東洋科に高校一年生で所属することが決定した、ごくごく一般の家庭に育った一青年だった―――筈。
入学方法も不明とされている、しかし将来の約束された名門校。そんな学校に彼が入学することが出来た理由は、曰く、紅の母である丹槻朱鳥がこの学園の卒業生であり、見込みがあるからという理由で土御門学園の校長が推薦を出したのだという。
そして、唯一と言える試験に受かったから、ここにいる―――それだけのことだった。
そしてこの学園に入学出来る唯一の手段を乗り越え、入学が決定し、説明会で学園の概要を聞く。その半年間の間で、紅は何度現実から逃避したことか。数えるだけ、覚えるだけで無駄に感じるほどには回数を重ねている。
紅本人は、こんな名の知れた学校に入れるほどの学力があるわけでもない、過去の栄光もない、努力してきた記憶もない。―――ましてや、入学条件に見合うようなものを持ち合わせているわけでも、ないのだから。
ただ普通に生活して、暮らして、生きてきただけの筈だった。
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