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違和感のないように。
陰に隠れて。
平凡でありたいと、思っていた。
だけれど、この学園に来た時点で、それはもう不可能な話であって。
世界は紅を否定する。平凡を自称する人間社会は、異物を否定する―――これは当たり前の話であって、異物は当然、世界から排除されなければならない。
ここに来たのは、きっと限界が来ていた朱鳥なりの配慮であったのかもしれない。
土御門学園であれば、隠す必要などないのだと、考えでもしたのだろうか。
―――そう、隠れる必要などない。
走る。
地を蹴る。
右腕を掲げあげる。
そのすべてを初動のうちに収めた紅はその手のひらに幾数もの炎の刃を、顕現させた。
体の中で、何かが膨れ上がるように熱くなるのを、感じた。
それは、決して血ではない。
だが。
血にも似通った何かが、悲鳴をあげたのを、本能が実感する。
体全体が、それを恐怖しているのを、理性が実感する。
剣呑さを強めた紅の目が、標的を認め、射抜いた。
紅の動作にいち早く白虎は、体躯に似合わない早さで首をもたげると、即座に体制を低くすると臨戦態勢に入り、唸りをあげた。
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