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【霊術真理・壱】三月/入学式と出会い
耳に甦るのは、平凡を生きる子どもの声。
恐ろしいのだと、とある少年は語る。
そんなものはないと、とある少女は否定する。
言葉が刃となって、彼の心を抉りとった。
痛いのだと、叫ぶ。
苦しいのだと、涙を流す。
それでも、世界は少年を否定して、容赦なくその心に刃を突き立てては、見えない血を流すことを留めない。
かさぶたになどならない。
突き刺さった刃は、一生彼の心を蝕む毒とすらなりうるのだろう。
―――刃を突き立てられても、痛みのない体が欲しいと思った。
骨と肉で作られた人の体を突き刺す刃物に、負けない心が欲しいと思ったこともある。
そうすれば、きっと弱い心であったとしても、耐えられると思ったから。
それが、どれだけ残酷なことかも、知らないで。
◯◯◯
差し込む朝日は、もう見慣れたものであるが、彼にとって視界に広がる風景は全く慣れたものではなかった。
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