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私、川村ちさとは高校の水泳部員だった。
泳ぎのタイムもそこそこよく、部のなかではいつも中心人物だった。
ところが、今日とても見過ごせない事件が起きた。
後輩の水泳部員に負けたのだ。
その子には私がどれだけ努力しても、勝てない何かがあった。
私はあっという間に、トップの座から引きずり下ろされた。
悔しかった。
その感情はその日のうちに殺意へと変わった。
私は行動力があった。
決めたことはすぐ実行する派だった。
その日の夕方、私はその後輩を呼び出した。
私がはじめて後輩に負けたこのプールに。
夕方、部活の終わった後の学校は静まり返っていた。
不思議そうにしながらも無邪気について来た後輩を、私は笑顔で殴り殺した。
近くに石という名の凶器があった。
私はその死体をプールに沈めた。
そしてその場を立ち去った。
きれいな満月の夜だった。
翌日、私のもとに来た警察は予想外の言葉を発した。
昨夜のプールの爆発犯は誰か、と。
私は聞かれたことにのみ、正直に答えた。
しかし、私の悪事が暴かれることはなかった。
数日後、犯人が捕まったという連絡が入った。
犯人は二十二歳の無職の女だった。
真夜中に学校に忍び込み、爆発物を置いていったという。
刑事が話しているのを聞きながら、私は一人笑っていた。
とても愉快な気分だった。
私は、自分が心の底からじわじわと腐っていくのを感じた。
その傷はすぐには癒えそうになかった。
何日、何年たっても言えない心の傷。
私は人通りの少ない道を歩いていた。
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