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白鳥と刹那の終着点
かつてハイツ・デネブと呼ばれていた建物は、一階部分が倒壊したことにより、その原型を留めないほどに崩れていた。冷たい石のような瓦礫が辺りに散乱し、もとはテーブルや椅子であっただろうものの残骸が転がる。
崩壊したその景色の中で、動くものは何もなかった。
ーー否。
突如、蒼い暗闇に包まれたその廃墟を、紅の光が貫いた。
螺旋を描きながら、レーザー砲のような勢いで進むその光はーー地上から数十メートルの虚空まで達すると、しだいに勢いを弱め、溶けるように消える。
その光の柱の跡に残されたのは、辺りを漂う熱と、その発射点から建物の屋上まで穿たれた大きな穴だった。
「よいしょ、っと。いやいや、こんなことができるなら最初からやってくれよな、厘」
「無茶言わないでよ。私だってびっくりしてるんだから」
その穴をよじ登って出てきたのは、病弱そうな見た目の少年と、紅蓮の槍を抱えた少女。
嵐山 京と、鳴滝 厘だった。
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