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「俺にしたって、つい最近身につけたばかりの力だ。デネブの奴らも、八千代を含めて全員、使えるやつなんていなかったのにな」
そこで言葉を切ってーー青年は笑った。
それは、いつもの飄々とした微笑ではなく。
何かの覚悟を決めた人間が浮かべるかのような……そんな笑みだった。
「いいぜ、厘。ーーオマエは、俺が直接殺すのに相応しい相手になった。だから、もう手加減はしねぇ」
そう言い放って、青年は手にした刀を地面と垂直に持ち直した。そしてそのまま、静かに瞼を閉じる。
「……?」
彼が何をしているか分からず、京は困惑の表情を浮かべた。
両手で刀の柄を持ち、両目を閉じたその姿は、まるで何かに祈っているようでーー
彼がその姿勢をとってから五秒が経っても、京はおろか厘ですらも動けずにいた。
(なんだ……?)
あまりにも予想外の展開に、戸惑いの色を隠せない京はーー今であれば、この青年へと攻撃を加えることができるのではないかという思考に辿りついた。しかし、すぐに思い直して首を横に振る。
ーーいや、これは罠だ。八千代さんも言っていたじゃないか。この人はカウンターを得意とする、と。ならばこれは、カウンターを誘い、それのみに集中するというこの人の技じゃないのか?
行くべきか、行かぬべきか。思考の狭間で揺れる京が、答えを出せないでいるうちにーー
その奥義が、発動した。
「ーー鮮光」
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