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十六能力《イザヨイ》
しばらくして泣き止んだ厘は、ふと思い出したように、唐突に叫んだ。
「あーっ!そうだ!キミの『十六能力』!」
厘がとりあえずは元気になったことに安心しながらも、京はその謎の単語について聞き返す。
「さっきも言ってたけど、その『十六能力』っていうのは……?」
「私たちが、明晰夢と戦うための力。見せたほうが早いね」
そう言うと、厘は胸元から小さなペンダントのようなものを取り出した。細い紐の先には、ルビーのように紅い宝石が輝いている。
ふと、先ほど見た明晰夢が頭をよぎる。しかし、京がそのことについてそれ以上考える前に――
厘が、その宝石を握りつぶした。
「えっ!?」
深紅の光が、宝石から溢れる。京が目を丸くしている間に、その光は徐々に細長く収束していきーー
一振りの、槍となった。
「これが、私の十六能力ーー『烈火矛槍』よ」
厘と出会ったときに、彼女が手にしていた槍。走っている間にいつの間にか消えていたので、どこかに置いてきてしまったのかと思っていた。
まじまじと、その槍を見つめる。
長い柄と鋭い刃を持った、シンプルな構造。しかし、ルビーのように紅く煌めく穂先からは、言いようもない威圧感が迸っている。
厘が流麗な動きで槍を一薙ぎすると、建物の壁に鋭い線が入った。いとも簡単に、壁を切り裂いたのだ。
誇らしげな様子で、厘が語る。
「私ね、小さい頃から槍術を習っていたの。この能力も、その影響じゃないかな。十六能力は、その人の性格や経験ーーそして、時には死因が基となって発現するものみたいだから」
そこまで言うと、厘は「烈火矛槍」を地面に突き立てる。すると、槍は光の粒となり、彼女の掌に収まったかと思うとーーふたたび、ルビーのようなペンダントに戻った。
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