白鳥と刹那の終着点

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 「霧立(キリタチ)」と呼ばれる、アメジストのような紫の刀が、眩いばかりの光に包まれる。  ーー「鮮光(センコウ)」!?  厘の「烈火矛槍(レッカムソウ)」が放った紅の光とは違い、刹那の「霧立(キリタチ)」のそれは、まるで宵闇のような深い紫色をしていた。闇のような光、とは矛盾も甚だしいがーー京には、それ以外の表現が思いつかなかった。唖然とする彼の目の前で、空気が渦巻き、やがて一つの現象が訪れる。  紫色の霧。  自分の指先すらも見えないような、深い深い紫の闇が、周囲の空間ごと京と厘を飲み込んだ。  視界が奪われる直前に見えたのは、刀から放出される、夥しい量の光の粒子。これが、これこそが、石田刹那という青年の「鮮光(センコウ)」に間違いないだろう。
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